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2008年10月

2008年10月30日 (木)

天使の落とした涙の中に #2

十一月の最後の金曜日、僕はクラブで帰りが少し遅くなり、まず晩飯を食べて風呂に入り親が帰ってくるまで居間でテレビを見ていた。部屋に上がったのは十時半を回っていたと思う。ベッドに横になり、何気に机の上を見た。見覚えのない白い箱がある。見間違いか?僕は起き上がった。今朝、あんなところに箱なんて置かなかった。親は僕より少し前に家を出ているし、誰かが置くなんてありえない話だ。すると突然その箱が部屋いっぱいに光り始めた。僕は目が眩み、一瞬何もわからなくなった。どれくらい光っていたのだろう。たぶんほんの何秒かだったと思う。それでも光が消えた後も、しばらく僕は周りが見えなかった。

「いったい…?」

僕はつぶやいた。その箱は僕が気がついたときと同じようにそのまま机の上にあった。恐る恐る僕は机に近づいた。箱に蓋はない。そっとのぞいてみて、僕は飛び上がるくらい驚いた。きっと腰を抜かすなんて感じはこんなときに起こるんだろう。僕はかなりのパニック状態だった。なぜならその箱の中には五センチくらいの、ほんとに例えるなら女の子がカバンなんかにつけているようなキューピー人形が入っていて、しかもそれは人形なんかじゃなくしっかりと動いていたからだ。

何をどうしたものか。僕は現状がつかめないでいた。夢か?錯覚か?疲れてんのか?僕はぶるぶるっと頭を振って、きっと気のせいだ、ということにしてもう一度箱の中を見た。…いる…。両手をしっかりとにぎりしめて、まるで赤ん坊のようだった。赤ん坊?ふと僕は怖くなった。これはもしかして水子の霊とかいうやつか?莉那の堕ろした子供が僕を怨んで出てきたのか?そう考えるともう恐怖でしかなかった。怖くてたまらない。思わず叫びたくなるような衝動にかられながら、僕は箱の中を凝視していた。

しばらくして気がついた。その人形のような得体の知れないモノが箱の中で小刻みに震えている。寒がっているのか?霊が?そう思ったとき、僕はなぜだか突然何のためらいもなく箱の中に手を入れ、その赤ん坊のような人形?を手にのせていた。

暖かい!

気のせいか?いや、違う。それはちゃんと手の中にいたし、体温を感じることもできた。けれどどうしたものか。この後僕は何をすればよいのかわからず、しばらく突っ立っていた。この子の震えは止まっている。何が何だかわからないが、とりあえずこの子は実在して生きているようだ。

そのとき突然ドアをノックする音がした。

僕は本当に飛び上がるくらい驚いた。ドアが開いて母親が顔を出す。

「洗濯物ここにおくわよ。…なにそんなびっくりした顔で突っ立ってるの?」

母は不思議そうに僕の顔を見た。

「これ…」

と僕は両手を差し出した。呆然としている僕をあきれた顔で見ながら母は言った。

「何、手汚れたの?じゃお風呂に入りなさいよ。まだ入ってなかったの?」

ドアが閉まって母が去っていく足音を聞きながら僕は固まっていた。手の中にははっきりこの子が眠っている。なのに母には見えないのか?

もうどうなっているのかわからなかった。

そのとき、この子が少し身動きした。心臓が止まるかと思った。もう少しで僕はこの子を床に落とすところだった。僕は母の持ってきた洗濯物のところへ行き、タオルを一枚取った。机に戻って箱の中にそれを敷きその上にこの子をそっとおろした。少し身動きしたが眠ったままだ。僕はそっと机を離れ、とにかくもう一度風呂に入ることにした。

バスルームで僕はお湯の中に沈みながら、ゆっくり今起こったらしいことを考えてみた。どう考えても非現実的だ。やっぱり気のせいだったのか?あんなにはっきりと母に見せたのに、母は気がつきもしなかったし、顔色ひとつ変わらなかった。もしかして母が仕込んだのか?僕は疑った。けれどそんな手の込んだいたずらをするような母ではない。第一あんな人形をどうやって用意するんだ。

結局わけのわからないまま風呂を出て、さっきのことが気のせいでもうあの箱がないことを祈りつつ部屋へ帰った。ドアを開け机の上を見る。箱は、まだあった。静かに近づいてのぞいてみる。あの子はいなかった。よかった、やっぱり気のせいだったんだ。そう思ってタオルを引っ張るとその間からあの子が出てきた。

「うわあっ!」

思わず僕は叫んだ。そのときその子が目を開け、僕を見た。くりっとした小さな目が僕をじっと見つめていた。

「君は…、誰?」

小さな声しか出せなかった。

「ボクハ、ボクダヨ」

返事が返ってくるなんて思わなかった。

「名前は?」

「ナマエッテナアニ?」

「何って、なんて言うんだろう?君を呼ぶときにいるんだけど…」

僕は上手く説明できなかった。

「ナマエッテミンナニアルノ?」

「そうだよ、僕は和也」

「カズヤ?」

「そう」

沈んだ表情をするのを見ながら僕はさらに聞いてみた。

「親とかさ、誰かが君の呼び方を決めてくれなかったの?」

「オヤ?オヤッテナアニ?」

「お父さんとお母さんのことだけど…?」

僕がそういった途端目を丸くしてタオルの中にもぐりこんでしまった。

「どうしたの?」

「ボク、ボクハダレモナマエヲキメテクレナカッタヨ」

タオルの中から小さな声が返ってきた。

「ボクニハナマエヲクレルヒトガイナイ…」

どうやら泣いているようだ。困ったな…と僕は考えて名案が浮かんだ。

「じゃあこうしよう。僕が君に名前をつけてあげるよ。そうだなあ…」

考えているとタオルの下からそっと顔を出してきた。何だかハムスターのようだ。と思った。でもさすがにハムスターなんてつけたら可哀想だと思い、いろいろ考えてみた。

「ボクノナマエ?」

涙に濡れた目でじっと僕を見つめている。ものすごく期待したまなざしだ。

「うん、名前だよ。ちょっと待って」

僕は十分くらい考えていた。その間ずっとこの子は僕を見つめ続けていた。

「シリウス…」

何気に僕はつぶやいた。

「シリウス!!」

即座に叫ぶ声が返ってきて僕はものすごく驚き、彼を見た。

「ぼくの名前はシリウスだね!」

嬉々として箱の中で踊っているような感じだった。違うんだけど…と心の中でつぶやいたが、この子の喜んでいる姿を見て、シリウスも悪くないか、と思い直した。シリウスは星の中でも有名だし、この子はまるで星の光の中から出てきたみたいだったからぴったりだと思った。まるでマンガだけど。

「よろしくね、シリウス」

「うん、カズヤ、ありがとう」

僕はいつの間にかシリウスの存在を受け入れていた。ほんの少し前まではものすごく不安だったのに、こんなにも非現実的な現実を不思議とも思わなくなっていた。

「シリウス、今日はもう寝よう。明日は土曜日だし、クラブも早く終わるから。それまで一人だけど待っててよ」

「カズヤ、どこへ行くの?」

「学校だよ。まだ高校生だからね」

「ガッコ?コーコーセ?よくわからないや」

「うん、また明日いろいろと教えてあげるよ。さあ寝よう。シリウスはそこでいい?」

シリウスは箱の中を見回した。そして少しうつむくと、

「カズヤのところがいい」

と小さな声で言った。寝ている間に僕が押しつぶしてしまいそうな気がしたが、シリウスを見るとイヤとは言えなかった。

「いいよ。じゃあこっちにタオルを持っていってあげるよ」

僕は箱の中に手を入れ、シリウスごとタオルを取り出しベッドへ連れて行った。シリウスをベッドの上に下ろすと彼は喜んで布団の上を転がりまわった。その間に僕はタオルを小さな寝袋風にたたみ、枕元に置いた。

ひょっとシリウスを見ると布団の中で丸くなって眠ってしまっていた。僕は思わず少し笑って、彼をタオルの布団へと移し、僕もその隣で横になった。

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2008年10月29日 (水)

天使の落とした涙の中に

あなたは知っていますか?

この世に在る命を

守るべきものを

尊きはなにかを

今一度考えてください

生命とはなにかを…

命の重みなんて考えたこともなかった。

僕たちの年代はその日の生活に満足していればそれでよかった。

誰かが傷ついていたってそれは単なる他人事で、気にするほどのことでもなく、ましてや目に見えないことまで気に掛けるはずもなかった。

僕だって、実際自分の身に起こったことでなければこんなにも色々と深く考えることはなかったはずだ。

あの一ヶ月間が、僕に命の大切さを、人間が本来持たなければならないモラルのようなものを教えてくれた。

僕は高橋和也、M高校の二年。サッカー部に所属。レギュラーではないが準レギュラーでそこそこ試合にも出ている。といっても、サッカー部自体がそれほど強くもないから言うほど目立つこともない。当たり前だがこれ以外に何の肩書きも持っていない。他愛もない高校生活。僕も普通一般の単なる高校生だった。一年のときから付き合っている莉那とは一年半。よく喧嘩もするけど結構うまくやっているほうだ。僕の親は飲食業をやっていてほとんど家にはいなかった。だからクラブのない日曜日なんかはよく莉那と二人で過ごしていた。ゲームをしたり、ビデオを見たりしながらやることもきっちりヤッていた。莉那はいつもちゃんとコンドームを持ってきていていた。初めのころは僕も持っていてちゃんと使っていたけれど、一年を過ぎたころからだんだんと面倒くさくなっていて、莉那の「今日はダメ」と言う日以外はあまり使わなくなっていた。

その日は突然やってきた。昼休み、莉那に呼ばれて僕は屋上へ行った。朝登校するときから莉那の様子は変だった。あまり話もせず、時々遠い目をしていた。僕は別れ話だと思っていた。けれど彼女の口から出た言葉は違っていた。

「和也、私妊娠してるみたいなの」

僕には、莉那の言っている言葉が理解できなかった。

「まさか、冗談だろ?」

僕はそう言うのがやっとだった。他になんと言っていいのかわからなかった。

「冗談?冗談でこんなこと言うわけないじゃない」

怒っていた。彼女は僕を睨みつけた後、静かにため息をついた。

「どうしよう…」

「どうしようって、言われても…。どうするんだよ」

まさか、だった。学校の中でそんな話を耳にしたこともあった。けれどまさか自分がその立場になるなんて思ってもみなかった。明らかに僕は動揺していた。莉那のことを考える余裕なんて少しもなかった。考えたのはただ、どうすれば自分に害が及ばないか、ということだけだった。無言でいる僕に莉那はポツリと言った。

「産めるわけ…、ないよね」

その言葉を聴いて僕はそのとき初めてまともに莉那の顔を直視した。

「産むつもりだったのか?」

「わからない。けど私、和也のこと好きだし、好きな人の子供が私のお腹の中にいるのよ。やっぱり…」

莉那は自分の腹部に手を当てて、ゆっくりと撫でながらそこで言葉を切った。彼女は僕が考えている以上に悩んでいたんだ、ということに気付いたのはもっと後になってからだった。このときに僕が莉那に対してもっとちゃんと考えていれば良かったのかもしれない。けれどそんなことは結果論であって、そのときの僕はただの大人の振りをした子供だった。

それからの僕たちはそれぞれに大変だった。結局彼女は子供を堕ろすことになり、僕は両親に散々怒られた後(母は泣き続け、父は僕を殴り飛ばした)莉那の家に行き、僕と両親の三人そろって莉那の両親に頭を下げまくった。僕は最後まで莉那としゃべることはなかった。

彼女は一週間学校を休み、僕も三日間停学をくらった。もちろん学校では散々うわさが流れていた。親からはとにかく家から一歩も出るなといわれ、携帯も取り上げられた。

三日間僕は一人きりだった。無性に苛々していた。なんで僕がこんな目に合うのか…そればかり思っていた。父や母は普通にしていたつもりだっただろう。けれど僕には嫌悪感を覚える、居心地の悪い空間だった。部屋にこもって、両親が出かけると居間でテレビを見て過ごした。おもしろくもなんともないテレビ。つまらないワイドショー。退屈な昼ドラマ。再放送の番組。だらだら過ごす時間が腹立たしかった。外に行けないことはない。でも僕はそうしなかった。僕に起こった事実を認めることはできなかった。

僕が謹慎処分明けに行った学校は、家よりももっと居心地が悪かった。クラスの女子の目はあからさまに冷たかった。僕が行く先々で、誰かが僕を見て囁いている。なんで僕が責められているんだ。なんで僕がこんなに嫌な思いをしなければいけないんだ?その思いだけが僕に付きまとった。

せめてもの救いはクラブだった。監督は特に何も言わず、いや、一言いってたっけ。

「自分のことだ。ここには関係ない。ボールを、チームメイトだけを見ていろ」

 なんとなくだったけれど、ここには僕の居場所が確保されている気分になれた。

 問題が起こったのは、そのすぐ後だった。

 僕は練習の準備をするために、他の部員たちとグラウンドに出た。すぐ隣で陸上部が同じように練習準備をしていた。

「あいつだろ。ほら、5組の女子の…」

嫌でも僕の耳に届いた。あざけるような口調。そいつらははっきりと僕を見ていた。僕はカッとなった。

「なんだよ!そんなに珍しいかよ!」

 僕は飛び出した。慌てて周りのサッカー部員たちが僕を押さえた。

「やめろ、和也!相手にすんな」

「離せよ!あいつら、許さねえ!僕の何を知ってんだっていうんだよ!」

「なんだよ、やんのかよ」

相手も前に出てきた。僕は何が何でも一発殴ってやりたかった。僕だって被害者なんだ!僕だって好き好んでこんな状態になったわけじゃない。それしか考えられなかった。

「和也!いい加減にしろ!また停学だぞ!」

僕を押さえていた部員たちは、力ずくで僕をその場から引き離した。むりやり部室に連れ戻された僕は、怒りのやり場がなくなってあたりかまわず暴れた。ロッカーを蹴飛ばし、壁を殴り、頭を抱え込んだ。

「ちくしょう!なんでこんな目に合うんだよ!ちくしょう!」

 部員たちは何も言わず、静かにその場に立っていた。誰も何も言わなかった。部室の中には僕の罵声だけだった。しばらくして、一人が声をかけてきた。

「和也、もういいだろ。俺たちはお前のこと知ってるよ。言いたい奴には言わせとけよ。だからもう止めろよ」

「何がわかってんだよ。お前らだって僕のこと笑ってんだろ。もういいよ」

「いい加減にしろよ!本当にそう思ってんなら、止めたりしないよ!少しは落ち着けよ!」

 僕は周りを見回した。みんな僕を見ている。僕はふっと肩の力が抜けた。

「ごめん、みんなに当たっても仕方ないよな…今日はもう帰るよ」

 ロッカーから荷物を取り出した。力なく部室を後にしようとした時だった。

「明日は練習来いよ」

 振り返るとその場の全員が僕にガッツポーズをして見せていた。

「サンキュ」

 僕は久々に笑顔になれた。

 この日のことは危うく大事にはならなかった。先生の耳に届いたのかどうかは知らない。けれど僕は呼び出しを受けることもなかった。もう僕は周りが気にならなくなった。忘れることにした。そうすれば楽だったから。

そんな話を莉那は誰かから聞いていたのだろう。学校に出てきた莉那は、僕に話しかけてくることもなく、僕も彼女になんと言っていいのかわからず、結局自然消滅みたいになってしまった。

僕たちのうわさもあまり聞かなくなったころから僕はなんだか寂しさを感じるようになった。けれどやっぱり莉那に話しかけることはできず、取り上げられた携帯がようやく僕の手元に戻ってきてもメールを打つ勇気さえ出なかった。

もう、忘れよう。全てを。何もかもを。過去にしてしまえばいい。そうすれば楽になれる。

僕はそう信じることにしたんだ…

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はじめましての1ページ

ブログを作ろうとか考えてなかったのに

突然、飛び込んでみました。

今は、なんでもインターネットの世界

ついていけてるのか、いないのか…( ̄◆ ̄;)

趣味の部屋になるのか

日記になるのか

未知数、未知数ヾ(´ε`*)ゝ

とりあえずは、ご挨拶まで

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