こんな夜には静かな旅を~vol.25
「彼は僕に、思い出を全て話して聞かせてくれました。
不思議な出会いのこと。
不思議な手紙のやり取りのこと。
出兵の日のこと。
戦時中、辛い時に思い出しては生き抜こうとがんばったこと。
そして…」
彼はまた言葉をとめた
私は顔を上げ、彼を見た
彼もまた私を見ていた
「貴女と、初めて出会ったこと」
私は言葉も出なかった
私は、テオと会っている?
「貴女は覚えているでしょうか?彼の話では、まだ貴女は幼い少女だったそうです。
ある春の日に、彼はあの湖に行ったそうです。
足が不自由だったために、そうそう外出することはなかったらしいのですが、
その日、彼は一人で湖に行ったそうです。
松葉杖をついて、なんとか湖に着いた。
戦争に行く前と変わらない景色がそこにはまだあった。
彼は懐かしさと、あの夢のような暖かい交流を思って湖のほとりに座っていた。
突然、ふわりと風が吹き、彼はふとあの樹を振り返ろうとした。
そして気がついた。自分のすぐ後ろに、少女が一人立っていることに。
少女は不思議そうに自分を見ている。
じっと自分を観察していた少女は、声をかけてきた」
「おじさん、どうして足が片方ないの?」
私は、つぶやくように言った
「え?」
ロルフが私を見ている
「おじさん、どうして足が片方ないの?
そうよ、私はそう言ったわ」
記憶の片隅に忘れられていた
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